事実婚カップルが用意すべき遺言書って?
結婚して姓が変わることに違和感があり、籍を入れない事実婚を選択しました。
どちらか一方が亡くなった後、相手に相続権がないことが心配です。
今後お二人で築いてゆく財産を、先立たれた方から譲り受けられないのは理不尽ですよね。この場合には、それぞれが「相手方に財産を譲る」という趣旨の遺言書を書いておくことをオススメします。
こういうケースでの遺言書に記載すべきポイントを説明しますね。
事実婚カップルに遺言書が必要な理由
結婚形態には「法律婚」と「事実婚」があります。まずは、それぞれの結婚形態における相続について整理してみます。
法律婚の場合の相続について
法的に結婚が成立したカップルであれば、もしもの時に遺産をお互いに相続できることが民法で保障されています。遺言書がなくても、遺産を次のような割合で相続する権利があります。
配偶者の相続割合
- 夫婦に子がいる場合 … 子の人数に限らず、配偶者は遺産の2分の1の相続が可能です。
- 子がおらず故人の親が存命の場合 … 配偶者は遺産の3分の2の相続が可能です。
- 子も親もおらず故人の兄弟姉妹が存命の場合 … 配偶者は遺産の4分の3の相続が可能です。
- 上記のいずれもいない場合 … 配偶者が全ての遺産を相続できます。
事実婚の場合の相続について
事実婚は、一般的には、お互いに伴侶として人生を共にすることを約束するものの、籍は入れないという結婚の形態です。現在の法律上では残念ながら夫婦としては認められません。
したがって、このままでは相続する権利がなく、遺産を引き継ぐには「遺贈」(遺言によって財産を贈与すること) という扱いになります。つまり必ず遺言書などの対策が必要ということです。
なお、遺言書による遺贈のほかに、「死因贈与」という契約を取り交わす方法もありますが、この記事では遺言書の作成に絞って説明いたします。
事実婚カップルの遺言書のポイント
事実婚カップルの場合は遺言書を遺すべきだとご理解いただいたところで、ここからは遺言書を作成する際に考慮すべきポイントを説明いたします。
遺言書の種類は「公正証書遺言」とする
遺言書の種類として代表的なものに「自筆証書遺言」、「秘密証書遺言」、「公正証書遺言」の3種類がありますが、有効性が最も高い「公正証書遺言」を選択すべきでしょう。
遺言書の種類について詳しくはこちらの記事「公正証書遺言の作成って手間がかかる?」をご参照ください。
推定相続人の遺留分に配慮する
法律上の推定相続人には以下の通り「遺留分」という最低限の相続権が保障されています。
推定相続人の遺留分
- 故人の子 … 子の遺留分は2分の1となります。複数の子がいる場合は人数で分配します (子が2名ならそれぞれ4分の1など)。
- 故人の親 … 故人に子がいない場合は親 (両親が死去していて祖父母が存命の場合は祖父母) に遺留分が発生します。その割合は3分の1となります。こちらも複数の権利者があれば人数で分配します。
- 故人の兄弟姉妹 … 遺留分はありません。
つまり、仮に遺言書に「全財産を事実婚のパートナーに遺贈する」と書いたとしても、遺留分の権利を主張する相続人がいれば、遺された方の間で争いが生じる可能性があります。
自身の死後にパートナーが遺産分割で揉めることを避けるには、推定相続人への慰留分を考慮した遺言書とすることが良いでしょう。
付言を工夫する
推定相続人などの親族との争いを避けるには、遺言書に心を込めたメッセージを書くことが有効です。遺言書の最後の項目に「付言(ふげん)」として、例えば以下のような思いを遺しておくことで、大切な皆さんが争わないで済むかもしれません。
付言の記載内容例
- あなたが法律婚でなく事実婚を選択した理由や心情
- あなたがパートナーのことを大切に思っているということ
- 財産の遺贈について、推定相続人に理解してほしいということ
遺言執行者を選任する
遺言者が亡くなりパートナーが遺産を受け取る場合、不動産の名義変更や預貯金の払戻しには相続人の協力が必要になります。相続人が非協力的であったり、相続人がいない場合には、手続きが煩雑になるので対策が必要です。
この場合は行政書士等の専門家を「遺言執行者」として選任する旨を遺言書に記しておくのが良いでしょう。相続人の状況に限らず、遺されたパートナーへの負担を減らすためには有効な手段になります。
まとめ
この記事では、事実婚のカップルがお互いに遺産を相続するために遺言書が必要であること、また、遺言書に書くべきポイントを説明いたしました。
この記事をお読みになり、遺言書を書こうと考えてみた方は...、
ぜひ一緒に考えさせてください。
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