相続登記の義務化により、先代名義のままの不動産の相続はタイヘン!

父が住んでいる田舎の家の名義が、先日亡くなった祖父のままになっているのですが、ゆくゆく私が相続するまで所有者の変更手続をしなくても大丈夫でしょうか?

実は2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内に登記申請をしないと10万円以下の過料が科される場合もあります。

それはタイヘン! 今のうちに父の名義に変更しておいてもらわないと...、でも、ちょっと待って。何でこういう法律ができたの?

それには「所有者不明土地」の問題と対策を知っておく必要があります。細かいところは省略して要点だけを簡単に説明させていただきますね。

相続登記の義務化の背景

所有者不明土地問題とは

昨今「所有者不明土地」の増加があり、土地が適切に管理されず荒れ放題になったり、道路拡張などのインフラ整備の妨げになったりと社会問題になっています。

解決策としての法整備

この問題を解決するために、国はいくつかの法整備を進めました。

民法の改正 (2023年4月1日施行)

共有不動産の有効活用
  • 共有不動産を農地から宅地に変更するなどの活用には、共有者の全員の同意が必要ですが、裁判により所在不明の共有者の同意は不要となります (民法251条)
  • 共有の土地をアスファルト舗装するなどの軽微な変更を加えるにも、これまでは共有者全員の同意が必要でしたが、民法改正後は共有者の過半数の同意で足りるようになります。また、所在不明の共有者の同意は不要となります (民法251条、252条)
所在不明共有者の持分の移転
  • 共有不動産について、所在不明の共有者の持分を、裁判により他の共有者が取得することが可能となります (民法258条、258条の2、262条の2、262条の3)
所有者不明土地の管理強化
  • 所有者不明の不動産や管理不全の不動産について、裁判所が管理人を定めて管理を命ずることが可能となります (民法264条の3、264条の8)
所有者不明土地の隣地の対応
  • 隣接する所有者不明土地の木の枝が、自分の土地に越境して伸びてきた時に、条件を満たせばそれを切り取ることが可能となります (民法233条)
相続による遺産分割の単純化
  • 相続開始後10年を過ぎて遺産分割する場合は、法定相続分で分割することになります (特別受益や寄与分の主張を排除して単純化するのが目的) (民法904条の3)

相続土地国庫帰属法の創設 (2023年4月27日施行)

※ 新法の正式名称は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」

土地所有権の国への移転 (新制度)
  • 土地を相続により取得した者が、その土地の所有権を国庫に帰属させる手続きを申請できるようになります。
  • 申請が承認されるにはいくつかの要件があり、また、承認された時には申請者は負担金 (10年分の管理料相当) を支払わなければなりません。

負担金の目安は、市街地の宅地(200㎡)が約80万円、原野が約20万円とされています。

法務局の資料『所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し』より

不動産登記法の改正 (2024年4月1日施行)

相続登記の義務化
  • 相続人が不動産を相続したことを知った日から3年以内に、所有権移転登記を申請することが義務化されます (不動産登記法76条の2)
  • 正当な理由なく登記申請を怠った場合は、10万円以内の過料が科されます (不動産登記法164条)
  • もし3年以内に相続人の間で話し合いがつかない場合は、相続人のうちの一人が、相続開始の事実を取り急ぎ申し出るという「相続人申告登記」制度が新設されます。ただしこの場合も、その後に遺産分割協議が成立したら3年以内に所有権移転登記が必要となります (不動産登記法76条の3)

不動産登記法の改正 (2026年4月までに施行予定)

住所・氏名変更登記の義務化
  • 不動産の所有者の住所・氏名が変更となった時には、2年以内に変更登記を申請することが義務化されます (不動産登記法76条の5)
  • 正当な理由なく登記申請を怠った場合は、5万円以下の過料が科されます (不動産登記法164条第2項)
  • 法務局が職権で登記変更を行う場合もあります (不動産登記法76条の6)

まとめ

この記事では、社会問題となっている所有者不明土地とは何か、また、国がその対策として法整備した内容はどういうものかを端的に説明させていただきました。

あなたが相続した、または相続予定の不動産があれば、登記上の所有者の名義を調べて、2024年4月の相続登記の義務化までに対策を検討しておいた方が良いでしょう。

もし、所有者が曽祖父やさらに上の世代だった場合には、推定相続人が何10人にも上るケースがあり、遺産分割協議や相続登記の手続にかなり難航するかもしれません。

ご自身で調査、手続きが困難であれば、

ぜひ一緒に考えさせてください。

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