デジタル遺産とは? 何が問題になってるの?

自分がもしもの時に、ネット証券の資産がちゃんと家族の手に渡るか心配しています。

通帳やキャッシュカードがある銀行とは違って、ネット上だけで完結する口座は遺族にとって見つけにくく、この手の資産は「デジタル遺産」と呼ばれて問題になっていますね。

確かにデジタル遺産ってよく耳にしますね。何が問題になっているのでしょうか。

ネットが普及してまだ数十年しか経っておらず、さらに新しい種類のネットサービスが次々と立ち上がってきているため、法整備やノウハウが追いついていないのです。
現時点で想定されている問題を、できるだけ簡単に説明してみますね。

デジタル遺産とは

「デジタル遺産」や「デジタル遺品」という言葉には、まだこれといった定義が定まっているわけではありませんが、いずれも、故人がスマホやPCに遺したデジタルデータ全般を指すと考えて差し支えないでしょう。

デジタル遺産・デジタル遺産の分類

デジタルデータ全般と言っても捉えどころがないですね。もう少し具体的に、どんなものがあるのかを分類してみます。

デジタル遺産の種類

故人のデジタルデータのうち金銭的価値のあるものをデジタル遺産」と呼ぶこととします。この場合の金銭的価値には負債も含みます。

例えば次のようなもので、いずれもネット上のサービスに口座(アカウント)を持つものです。

資産と考えられるもの
  • ネット銀行 … メガバンクや地方銀行などと違って、実店舗に頼らずネット上で運営する銀行が台頭しています。これらのネット銀行でも必ずキャッシュカードが発行されるため、ほかのデジタル遺産に比べると口座の特定は容易でしょう。
  • ネット証券 … ネット証券で株式や投資信託を保有している方も多数あります。多くのネット証券はカードなどを発行しないため、口座を見つけるのに苦慮することが多いです。
  • 暗号資産 … ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)については、運営会社が多数あり、故人から生前に聞く機会がなければ簡単には見つけられません。
  • 決済サービス … ここ数年で「○○ペイ」という名のサービスが乱立しており、年配の方でも利用者が増えています。通常はスマホのアプリで管理されており、スマホが開けないとお手上げです。
  • マイル・ポイントサービス … 航空会社のように大手の企業ではアカウント有無の問い合わせに応じてくれる可能性がありますが、ショップのポイントなどは特定が難しいでしょう。
負債と考えられるもの
  • サブスクリプション … Amazon定期便などの定期購入やNetflixやゲームなどの課金サービスなどが該当します。気づかずにいつまでも支払い続けてしまう可能性があります。

相続の場面で特に問題となるのがこのような「デジタル遺産」です。不動産や通帳のある預金と違って、見つけにくいのがデジタルデータの特徴なので、相続財産の特定に手こずることになります。

デジタル遺品の種類

故人のデジタルデータのうち、スマホに残された写真のように、金銭的価値は明確でないものの、想い出としての価値があるものを「デジタル遺品」と呼ぶこととします。

例えば次のようなものです。

スマホやPC内に保管されたデータ
  • 故人がスマホやPCで作成したデータ … 写真のほか、文書、資料、メールのやりとりが該当します。遺族で大切な想い出として取り扱っていただければ良く、相続で問題になるリスクは低いと言えます。LINEに不穏なやりとりが残っていないかといった懸念はありますが...。
ネット上に存在するデータ
  • SNSアカウント … Facebook、Twitterなどが該当します。基本的にはアカウントは相続できず、遺族による廃止が選択肢となります。Facebookは手続により「追悼アカウント」として残すこともできます。
  • キーアカウント … Googleアカウント、Apple ID、Microsoftアカウントなどは、他のサービスとも結びついていることが多く、慎重に対応しておきたいものです。

SNSなどのアカウントは金銭的な遺産相続の対象からは外れますが、遺族にとって、またネット上で故人と交流していた方にとっても大切なものであるはずです。

デジタル遺産の問題点

これでデジタル遺産・デジタル遺品にはどんなものがあるのかが分かってきたと思います。同時にこれは厄介だなと思ったのではないでしょうか。

次に、遺産相続に金銭的に関わる「デジタル遺産」の問題を整理してみます (想い出に関わる「デジタル遺品」については、後日あらためて記事にしたいと思います)。

不適切な遺産分割

人が死亡して相続が開始されたら、遺産の洗い出しを行った上で相続人の間で遺産分割方法を話し合うことになります。

ところが「デジタル遺産」を全てを見つけ出すのは困難なので、遺産分割対象から漏れてしまいがちです。

遺産分割が完了した後で、ネット証券などに多額の金融資産を保有していることが発覚したとしたら、相続人の間で揉める材料となってしまいますね。

相続税の追徴

後から発覚した資産を誰が受け取るかが平和裡にまとまったとしても、その人には相続税が追加で課されるかもしれません。

負債の取立て

プラスの資産ならまだ良いのですが、サブスクリプションと呼ばれる定期的な支払い契約を見落としていると、忘れた頃にまとまった額の請求が届くことがあり得ます。

あるいは、株やFX(外国為替取引)の証拠金取引では、実際の手持ち資金以上の損害が発生することもあるため、こちらも後日に追加徴収の請求があるかもしれません。

相続人は、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も相続することになります。誰が支払うかで揉めることが予想されます。

まとめ

デジタル遺産は、目に見えないデジタルデータを指すため一般にはとっつきにくく、また種類が多岐にわたっているため、問題点も捉えどころがないというのが実際のところです。

この記事では、まずはデジタル遺産とは何か、またデジタル遺産の種類はどんなものがあるのかをお伝えしました。その上で、遺産相続において考えられる問題点について要点だけ触れてみました。

この記事だけではご紹介したいことは不充分だと認識しています。今後も関係するテーマで引き続き記事を書いていきたいと思い、専門サイト『デジタル遺産の相続ラボ』を立ち上げました。

あなたが、もし差し迫った問題を抱えておられるなら、

ぜひ一緒に考えさせてください。

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