外国で一人暮らしの親を日本に呼び寄せるビザってあるの? 「老親扶養」って聞くけど

相談者様

本国を離れて長く日本で暮らしています。
自国で一人暮らしとなっている親が歳をとるにつれて弱ってきて心配で...。
親を呼び寄せるための「老親扶養」というビザがあると聞いたので申請したいのですが。

回答者

お気持ちわかります。ご心配ですね。
実は外国人が親を呼び寄せるための在留資格は入管法に規定されておらず、そのためビザ取得のハードルは相当高いものと思ってください。
とは言え、状況によっては認められる可能性がない訳ではありません。
私の経験した範囲に限られますが、条件や必要書類などについて説明いたします。

外国の親を呼び寄せるための在留資格(?)「老親扶養」とは

入管法には29種類の在留資格が定められていますが、外国の親を呼び寄せるための在留資格は、実は存在しません。巷では「老親扶養」という言葉が、あたかも在留資格の一つのように取り上げられますが、公式にはこのような種類はありません

在留資格の種類の一つに、法務大臣が個々の外国人について特に指定する「特定活動」という種類があり、「特定活動」にも定型的なパターンとして告示されたもの (例えば外交官等の家事使用人、ワーキング・ホリデー、経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者など) がありますが、いわゆる「老親扶養」はそれにも当てはまらず、「告示外の特定活動」ということになります。

つまり、ビザ取得の基準や手続方法について、これなら大丈夫という明確なルールがないのです。
ここから先は、私どもの経験した範囲を元に、条件や揃えるべき書類などについて説明いたします。

いわゆる「老親扶養」ビザを申請するには

繰り返しになりますが、「老親扶養」という在留資格の種類はなく、そのため在留資格申請の明確なルールはありません。ここで示す説明は、あくまでも私どもの経験上の知見を紹介するものになります。

在留資格が認められるための要件

どこにも正解はありませんが、少なくとも以下の条件を満たすことが必要だと考えます。

親 (本人) の状況

あくまでも親が本国で一人で生活できないことが条件となります。

  • 健康状態が良くないこと
  • 高齢であること
  • 本国に面倒を見てもらう親族がいないこと

子 (扶養者) の状況

日本で扶養する子の条件は以下と想定されます。

  • 長期の在留資格 (永住者、日本人の配偶者等、永住者など) を有していること
  • 安定した収入と住居があること
  • 親と同居することに家族の理解があること

在留資格取得の手順

告示外の特定活動ビザは入国の際には発行されません。まずは短期ビザで入国し在留資格の変更を申請することになります。

短期滞在ビザを取得し来日する
ビザ申請時に記述する、訪日の目的は「親族訪問」が無難です。「観光」では健康に問題なしとの印象を与えます。
滞在期間は長ければ長いだけ、この後の手続期間に余裕が生じます。最大90日が認められればベストです。
また、来日する前に、身分証明などの書類を本国で取得しておきましょう。
医師の診察を受ける
健康状態がどの程度悪いのか、医師の診察を受けて診断書を作成してもらってください。
もちろん、本国の医療機関の診断書でも良いのですが、信憑性が疑われるとNGですし、また日本語への翻訳文の作成も必要となります。
入管に相談する
後述する書類を一通り揃えて、入管に出向きます。行政書士であっても窓口時間の予約はできず、もちろん電子申請も不可です。
提出時の口上は「申請書を提出します」ではなく、そもそも規定外のケースなので,
「申請できるか相談させてください」となります。
申請相談では細かいことを聞かれますので、入念に事前準備しておいてください。
相談後に申請する
相談が何とか突破でき、書類の不備や不足がなければ、その場で申請受付となる可能性が高まります。
職員による書類チェックの後、「申請受付証」を発行してもらえれば、入管での手続きは一旦完了です。
その後の審査を待ちましょう。
在留カードを受け取る
後日、審査が完了したらハガキが届きますので、ハガキに書いてある書類を用意して入管に結果を聞きに行きます。
審査結果が無事OK (許可) であれば在留カードがもらえます!

準備すべき書類

入管の審査官に納得してもらえるように、考えられる書類はできるだけ揃えましょう。主なものを以下に示します。

申請書

申請に必須なのは、申請書そのもののほか、フリーフォーマットの理由書です。

  • 在留資格変更許可申請書 … 申請書本体は入管のサイトから入手できます。書式は「17. 上記以外の在留資格・入国目的」で良いでしょう。
  • 申請の要旨 … いわゆる「理由書」です。「法務大臣の考慮に値すべき特別の理由」を述べる必要があります。冗長な説明や、情に訴えるストーリーはお勧めしません。あくまでも必要な情報を端的にまとめてください。私どもでは1枚に収めることを心がけています。また宛先は「東京出入国在留管理局長殿」などでなく「法務大臣殿」とします。

本人 (親) に関する資料

本人に関する資料としては、身分関係、家族関係、体調関係をポイントにします。

  • 身分証明書 … 本国における身分証明書とその日本語訳を準備します。
  • 履歴書 … 本人の身分関係 (婚姻や子の誕生など)、最終学歴、最終職歴、外国での滞在履歴 (特に日本への渡航は外務省でチェックできるので漏れ、偽りなく) をまとめます。
  • 家族関係図 … 親族を図示して、本人を扶養できるのはこの人しかいないということを視覚的に示します。
  • 医師による診断書 … 継続して通院が必要であるなどの診断があればベターですが、そうでなくても、体調が悪いならその診断を書いてくれるはずです。
  • その他 … 扶養者となる子以外に他の親族があれば、その者には扶養できない理由を示します。理由としては、その者も病気を患っていたり、遠方に住んでいたり、などが考えられます。

扶養者 (子) に関する資料

本人を扶養する子について、またその家族について状況を説明する書類が必要です。

  • 身分証明書類 … 子とその家族について、住民票、在留カードのコピーなどの身分を証明する書類を準備します。
  • 経済状況の証明書類 … 納税証明書、在職証明書、預金残高証明書など、親を扶養するだけの経済力があることを示します。
  • 住居の証明書類 … 持ち家なら登記簿、賃貸なら契約書を用意します。また、親を住まわせる部屋を示した間取り図や写真があれば、なお良いでしょう。

まとめ

外国に一人暮らしの年老いた親を日本に呼び寄せたいという方は多いと思います。体調も悪く切実なら、「特定活動」の在留資格取得に挑戦することが選択肢になるでしょう。

ただし、入管法に定められた在留資格の種類からは外れるため、申請の難易度が高く、申請が受け付けられたとしても許可されるとは限りません。

ご自身で申請するより、知見のある専門家を頼ろうとお思いなら、

ぜひ一緒に考えさせてください。

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