一人親方で建設業許可を取るには?
私は建設業の一人親方として独立してこの道もう10年。
最近、元請さんから、うちも建設業許可を取った方が良いと言われてて、どうしようかと...。
建設業許可を取ると、500万円以上の工事を受注できたり、社会的信用度も上がるでしょう。
また、元請会社によっては、許可取得者にしか発注しないケースもあるようですね。
人を雇ったりと手を広げるつもりはないんだが、一人親方のままでも許可申請できるのかな?
一人親方 (個人事業主で従業員がいないケース) でも一概に無理という訳ではありません。
営業所に「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」を置かなければなりませんが、要件さえ満たせれば、あなたが二役を兼ねることができます。
では、申請のための要件を簡単にまとめておきますので参考にしてくださいね。
建設業許可を受けるための要件
建設業の許可には厳格な要件が決められています。これは、経営管理能力や技術力が不足している業者や、財務基盤が脆弱な業者から、発注者の保護を図ることを目的としているためです。
さっそくその要件を見ていきましょう。
6つの申請要件
東京都の「建設業許可の手引き 」によると、許可を受けるための要件は次の6つがあります。
(1) 「経営業務の管理を適切に行うに足りる能力」に関する要件
営業所には建設業の経営と管理の経験がある責任者を置く必要があります。この役割は「経営業務管理者」、略して「経管 (ケイカン)」と言われています。
個人事業主であるあなたに、管理責任者の経験が5年以上あれば要件を満たします。しかし、その証明書類が用意できるかがポイントになります。
(2) 「専任技術者」に関する要件
営業所に常勤して、業務に専任する技術者を置く必要があります。この役割は「専任技術者」、略して「専技 (センギ)」と言われます。
あなた自身の実務経験が10年以上あれば要件を満たします。上記(1)の「経営業務管理者」よりも長い期間になり、その証明書類が準備できるかが、今回の許可申請における最大のポイントとなります。
なお、この実務経験年数は、指定学科 (建築学など) の大学を卒業していれば3年に、指定学科の高校を卒業していれば5年に短縮されます。
あるいは、所定の資格を取得していれば、実務経験は不要または短縮されます。
(3) 「財産的基礎等」に関する要件
自己資本が500万円以上あれば問題ありません。確定申告で添付している貸借対照表で証明できればOKです。
純資産額が不足する場合には、500万円以上の資金調達能力を示す必要がありますので、何とか現金をかき集めて、銀行口座の預金残高証明を取りましょう。
(4) 「誠実性」に関する要件
過去にあなたの事業やあなた自身に、契約違反や法律に反することがなかったかなどが問われます。
(5) 「欠格要件等」について
過去にあなたが刑に処せられたことがないか、暴力団員でないか、認知能力に問題ないか (成人被後見人でないこと) などが問われます。
(6) 「社会保険への加入」に関する要件
従業員を1人でも雇う場合には雇用保険への加入が、5人以上雇う場合には健康保険、厚生年金保険への加入が義務となります (令和2年10月に要件化されました)。
ただし一人親方の場合は必要ありません。
証明資料収集の最大の難関
6つの要件のうちで、もっとも証明することが困難だと思えるのが、(1)「経営業務管理者」と(2)「専任技術者」の要件です。
この2つについて証明書類の考え方を説明します。
「経営業務管理者」の要件を満たす証明書類
一人親方であるあなたが、管理責任者として5年以上建設業を営んできたと、自他共に認めるとしましょう。
でも、そのことを、証拠となる書類で証明する必要があるのです。
それには、5年分の「工事請負契約書」または「注文書 (原本)」 が必要となります。申請先の都道府県によっては、1月ごとに1件分の証明書類が必要となります (5年で60件分)。
これらが揃わず、代わりに、「請求書」、「押印のない工事請書」、「原本でない注文書」などを使う場合には、さらにそれと突き合わせできる「入金記録」が必要となります。これも申請先の都道府県によっては5年で60件分を覚悟する必要があります。
- 毎月1件分の証明書類が要求されるかどうかは、申請先の都道府県によって取り扱いが異なりますので、申請窓口か、実績のある行政書士にご相談いただくことをお勧めします。
「専任技術者」の要件を満たす証明書類
あなたの実務経験を証明するのも「経営業務管理者」の証明書類と同様です。
10年分の証明書類を揃えるのはかなりの難易度かと思います。申請先の都道府県によっては毎月1件 (10年で120件分) の「工事請負契約書」が必要とされます。「請求書」と「入金記録」の組み合わせだと、さらに困難を伴いますね。
- 毎月1件分の証明書類が要求されるかどうかは、申請先の都道府県によって取り扱いが異なりますので、申請窓口か、実績のある行政書士にご相談いただくことをお勧めします。
何と言っても、この書類を作成できるかが最大のポイントなのです。
その他の補足事項
ここまでで説明が足りていないことを、いくつか補足しておきます。
定期的な報告義務
建設業許可を取得すると、必ず定期的に次の手続きが必要となります。
- 「決算変更届」または「事業年度終了報告」(都道府県によって呼び名が違います)
毎年の決算終了後に決算内容を提出する必要があります。 - 「許可更新」
通常は5年ごとに建設業許可の更新の申請が必要です。
法人設立の予定がある場合
近い将来は法人として事業を続けたいという考えがあるのであれば、建設業許可と法人設立のどちらを先にするかは戦略を立てる必要があります。
個人事業主として取得した建設業許可は、基本的には法人に引き継ぐことはできないため、法人設立後にあらためて建設業許可を申請しなければならないとお考えください。
まとめ
一人親方で従業員を雇用しなくても、建設業許可を受けることは可能だということをご説明いたしました。
ただし、許可申請には、あなた自身の管理経験、実務経験を証明するための書類を収集することが、最大のポイントとなることをお伝えしました。
一人での書類作成が大変だとお感じなら、
ぜひ一緒に考えさせてください。
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