日本で働いて5年経てば帰化できる?

相談者様

私は留学で日本に来て、そのまま日本の企業に就職しました。
日本が大好きです。一生ここに住みたいと思い、帰化しようと考えています。

回答者

あなたの日本への想いは分かりましたが、ずっと住み続けたいという希望を叶えるには、「帰化」でなくても「永住ビザ」の取得も考えられますよ。

相談者様

いえ、日本で参政権も得たいと考えているため、やっぱり帰化が良いです。
要件や手続き方法を教えてもらえますか。

回答者

分かりました。入門編ということで、簡単にまとめておきますね。

帰化と永住の違い

帰化とは

帰化とは、元の国籍から離脱し、日本の国籍を取得することです。

これにより、日本人としての全ての権利が取得できます。特に、参政権が得られるため、選挙を通じて政治参加したり、議員に立候補することも可能となります。

手続きをするには、申請書のほかに様々な書類を法務局に届け出て、法務大臣の許可を得る必要があります。

永住とは

外国人が「永住」の在留資格 (永住ビザ) を得て、継続して日本に住むことです。

他の就労ビザのような職業の制限が解除されますが、日本人と同等の権利はありません。例えば以下のような制約があります。

  • 在留カードの携帯義務がある (不携帯は罰則あり)
  • 国籍によっては外国への渡航の際に再入国許可手続きが必要
  • 参政権がない

また、最悪のシナリオとして、日本にとって好ましくないと判断された場合には、退去強制処分 (母国への強制送還や国外追放) もあり得ます。

帰化の要件

帰化の要件は「国籍法」の第五条に明記されていますが、分かりやすい表現でまとめておきます。

  1. 居住要件 … 連続して5年以上日本に住んでいる必要があります。途中で国外に長期滞在していた場合は、その後あらためて5年以上の国内居住が必要となります。また、その期間内に3年以上の就労期間が必要とされます (例えば短大に留学して2年、就職して3年という具合に)。
  2. 能力要件 … 簡単にいうと成人していること。2022年4月から日本では成人年齢が18歳となっていますが、母国の法律によっても成人年齢に達している必要があります。
  3. 素行要件 … 素行が善良であることが求められます。交通違反などを繰り返し起こしていないことと、税金や社会保険料をきちんと納めていることがポイントです。
  4. 生計要件 … 金銭的に問題なく暮らしていけることが必要です。
  5. 喪失要件 … 日本国籍を取得する代わりに、母国の国籍を喪失することが必要です。
  6. 思想要件 … 日本の政府を暴力で破壊することを企てたり主張するような者はNGです。
  7. 日本語能力 … これは国籍法には明記されていませんが、日常生活に支障のない程度の日本語能力 (会話および読み書き) が要求されます。

帰化の手続き

申請書類

帰化許可申請に必要となる書類は人によって異なり、法務局で相談した際に一覧が渡されます。

主な書類については以下の通りです。会社経営者や個人事業主の方は、その事業の資料も必要となりますが、ここでは省略させていただきます。

ご自身で作成する書類

いずれも書式と記入例が法務局でもらえますが、内容はご自身で作成する必要があります。

  1. 帰化許可申請書 … 個人に関する事実情報を間違いなく埋めてください。なお、この申請書で国籍取得後の氏名と戸籍を指定できます。また、鮮明な写真を貼付します。
  2. 親族の概要を記載した書面 … 日本在住の親族と外国在住の親族とを分けて記載します。
  3. 履歴書 … 出生時から漏れなく記載します。また、卒業証明書や在勤証明書など、重要な経歴に紐つく書類を添付します。
  4. 帰化の動機書 … なぜ帰化したいかという理由を作文し、自筆します (ワープロ不可)。
  5. 宣誓書 … 事前準備は不要です。法務局で申請の際に、担当官の前で署名します。
  6. 生計の概要を記載した書面 … 申請日の前月1ヶ月間の収入と支出額を記入します。また、預貯金、所有不動産等の資産も明記し証明書を添えます。源泉徴収票、納税証明書も必要です。
  7. 自宅、勤務先付近の略図 … 地図を手書きしなくても、Googleマップを印刷したものに経路を書き込んだもので良いようです。過去3年のうちに引っ越した方は、前住所分も必要となります。

日本の役所で発行してもらう書類

役所や法務局で多数の書類を入手する必要があります。

  • 外国人登録原票記載事項証明書 (本人および同居家族について必要)
  • 住民票 (両親、兄弟姉妹、婚約者の中に日本人がいる場合)
  • 運転記録証明書 (5年分の事故、違反が分かるもの)
  • 資産・収入に関する各種証明 (勤務先の給与証明書、源泉徴収票、登記簿謄本、賃貸契約書、預貯金通帳の写しまたは預貯金残高証明書、納税証明書など)

母国で発行してもらう書類

母国により必要書類が変わってきますので、法務局の担当官の指示に従って取得してください。なお、いずれの書類も日本語の訳文を作成する必要があります。

  • 出生証明書
  • 婚姻証明書 / 離婚証明書 (本人と両親について必要)
  • 戸籍謄本または親族関係証明書 (または、両親、兄弟姉妹、子の全員分の出生証明書)
  • 国籍証明書 (帰化後に母国の国籍を喪失することの証明書)
  • 死亡証明書 (両親、兄弟姉妹について必要)

申請方法

あなたが自力で手続きを行う場合の流れは以下の通りとなります。

何度も法務局へ出向く時間が取れなかったり、書類作成、収集の手間が惜しい場合には、専門家である行政書士に依頼されることも検討してください。

法務局への相談
法務局または地方法務局宛に、事前に時間を予約した上で出向きます。
担当官に帰化申請が可能かどうかを判断してもらい、必要な書類の指示を受けます。
場合によっては、種類の収集後に再度相談を受ける必要があります。
書類の収集と作成
前述の「申請書類」で挙げた資料を収集したり作成したりします。
中には有効期限のある書類があるので、取得する順序を計画的に実施する必要があります。
書類の確認
法務局で書類を確認してもらい、不備があれば、修正や再収集を行います。
場合によっては何度か法務局に出向く必要があります。
申請
書類の不備が全て解消された段階で、法務局に申請書と必要書類一式を提出し、受理してもらいます。
面接
担当官から連絡を受けて、指定の日時に法務局に出向き、面接を受けます。
書類への記載内容について説明を求められたり、動機を聞かれたりします。
審査〜許可
審査には10〜12ヶ月かかるとお考えください。
また、その間に法務局から追加で問い合わせ等があるかもしれません。
許可が下りたら、「帰化者の身分証明書」が発行されます。
役所への届け
役所に出向き、在留カードの返納と、戸籍の作成を「帰化届」として手続きします。

まとめ

日本国籍を取得する「帰化」について、要件と手続きをできるだけシンプルにお伝えしました。

必要書類が多岐にわたること、法務局へも何度も出向くケースがあることが、お分かりいただけたと思います。

この記事を読んで途方に暮れた方があるかもしれません。

ぜひ一緒に考えさせてください。

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